2024/04/28

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「農民退休儲金条例」成立、農業従事者は満65歳で「退職貯金」の受給が可能に

2020/05/25
立法院が「農民退休儲金条例」を可決。これまで65歳になると一律で固定された金額の「高齢農家補助金」しか受け取れなかった農業従事者に、限定的な年金制度が初めて整った。写真は同条例成立を喜ぶ立法委員(国会議員)たち。(中央社)
立法院(国会)が22日、農業従事者のための限定的な年金制度の法源となる「農民退休儲金条例」(農業従事者退職貯金条例)を可決した。焦点となっていたのは農業従事者と政府の負担割合。同条例によれば、農業従事者が負担する保険料は一般労働者の法定月額最低賃金の1%から10%までの間で自ら決められる(負担比率)。そして政府は1対1の負担割合で、農業従事者が納める保険料と同額の負担をすることになっている。同条例の施行日は行政院(内閣)が決定することになっており、最速で来年1月1日になる見通し。台湾では現在、農業に従事している人には「農民保険」しかなく、65歳以降に毎月7.550台湾元(約2万6,700日本円)の補助金「老年農民福利津貼(老農津貼)」(高齢農家補助金)を受け取れるにすぎない。(「農民保険」には「老農津貼」のほか出産手当、労災給付金、葬祭費なども含まれる)
 
今回成立した「農民退休儲金条例」には、農業従事者一人ひとりに「農民退休儲金個人専戸」(専用口座)を設定し、農業従事者は満65歳になれば毎月「退職貯金」を受け取れることが明記されている。この「退職貯金」の保険料は農業従事者自身と行政院農業委員会(日本の農水省に相当)が毎月支払い、農業従事者は毎年5月と11月に負担比率(最低賃金の何%を納めるか)の調整を申請することが出来る。
 
農業従事者で保険料の納付が可能な条件は、65歳未満で農業に実際に従事していること、また、「農民保険」の被保険者としての資格を満たしていること、そして「社会保険老年給付」(労働者・軍人・公務員及び教職員の退職年金やそれ以外の国民年金)の支給を受けていないこと。保険料の納付期間は、納め始めてから満65歳となる前日まで。あるいは「農民保険」から脱退した日までで、65歳になれば「退職貯金」(年金)が受け取れる。金額は専用口座に積み立てられる元金と収益を、「年金生命表」による平均余命ならびに利率などを基に計算して毎月支給する。
 
行政院農業委員会の陳吉仲主任委員(大臣)は、農業は専門の職業で、しかるべき保障がなされるべきだとした上で、「農民退休儲金」制度は農業従事者が自主的に参加し、自分専用の「農民退休儲金」口座が持てるものだと説明、政府は最大で最低賃金の10%まで負担するので65歳未満の農家は参加するようにと勧励した。
 
一般労働者の「労工退休金」(労働退職年金)の負担比率は6%ながら、標準報酬月額(保険料の額や保険給付金の額を決めるための給料などの基準)は法定最低賃金の2万3,800台湾元(約8万4,200日本円)に固定されておらず、より多くの保険料を納めることも可能になっている。このため政府は農業従事者にも安心してリタイアしてもらえるよう、政府負担の上限を10%と高く設定した。加入期間が25年だった場合、農業従事者は65歳以降、毎月2万4,416台湾元(約8万6,400日本円)あまり、35年ならば3万7,027台湾元(約13万1,000日本円)あまりが受け取れる。一方、受給期間は85歳までに限定されており、「農民退休儲金」を受給する前に死亡、もしくは受給期間中に死亡した場合、その人の専用口座の残額は遺族もしくは指定された受給者が受け取ることになる。陳主任委員は、「農民退休儲金」の金額は、600万人とされる一般労働者の「労工退休金」とほぼ同水準だと説明している。
 
 

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