2024/05/03

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学者:南シナ海判決で「特殊な実体」台湾が浮き彫りに

2016/08/08
法務部(日本の法務省に相当)と台湾国際法学会は6日、「南シナ海仲裁判決と台湾」と題する学術シンポジウムを開催した。常設仲裁裁判所が今年7月に下した南シナ海判決の内容について、学者たちがそれぞれの見解を示した。(中央社)

常設仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)が南シナ海の領有権を巡る判決で、中華民国(台湾)を「中国の台湾当局(Taiwan Authority of China)」と呼称したことについて、裁判の過程に注目していたある学者は、「仲裁裁判所が台湾の地位の取り扱いについて細心の注意を払っていたことが見て取れる。一般に指摘されるような『台湾は完全に中国大陸の一部である』ということではなく、台湾を特殊な実体として取り扱っていることが分かる」と指摘した。

法務部(日本の法務省に相当)と台湾国際法学会は6日、「南シナ海仲裁判決と台湾」と題する学術シンポジウムを開催した。午後のセッションでは国立台湾大学政治系(学科)の蔡季廷助理教授、英オックスフォード大学の宋承恩博士研究員(法学)が論文を発表し、「南シナ海仲裁判決と台湾の地位」について議論した。

オランダのハーグにある常設仲裁裁判所は今年7月12日、フィリピンから提出されていた南シナ海を巡る領有権問題について判決を下した。判決では、南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)を構成する地物について、その全てが「岩」であり、その中には南沙諸島最大の島で、中華民国固有の領土である太平島も含まれるとした。また、判決では「中国の台湾当局」という不当な名称で中華民国を呼称した。

これについて蔡季廷助理教授は、台湾の地位に対する仲裁裁判所の態度は、一般に考えられているような「台湾は完全に中国大陸の一部である」と認識しているものではないと指摘した。

蔡助理教授によると、仲裁裁判所は手続きのルールにのっとり、裁判の過程でフィリピンに対して、台湾が公式または非公式なルートで、さまざまな国際的な場面で発表または提出した台湾に関する歴史的な論述、および太平島に関する資料や書類について回答を示すよう求めていた。

蔡助理教授は、仲裁裁判所はフィリピンが台湾に対して回答を示すべきだと考えていたものの、台湾の主張の効力が中国大陸に帰属すべきだとはみなしていないと指摘。仲裁裁判所は実のところ台湾を「1つの特殊な実体」とみなしており、台湾から発せられる声を重視していたことが分かるとの見解を示した。

一方、宋博士研究員は、一般的に今回の南シナ海判決はフィリピンの大勝利との見方が強いものの、この中から台湾のチャンスを垣間見ることができたと指摘。例えば仲裁裁判所は台湾を「中国の台湾当局」と呼称したが、同時に「フォルモサ」「中華民国政府」の名称も使用しており、台湾の地位について明確な認定を行ったわけではないため、台湾は自らの地位が矮小化されたとばかり思う必要はないと説明した。

宋博士研究員はまた、南シナ海判決全体について言えば、第三者機関が対応のために介入する可能性も残されており、例えば一審においてベトナムが資料の提出を求めたり、その後、マレーシアも同国の周辺水域については関与しないよう釘を刺したりするなどしていることから、仲裁裁判所でも太平島の「所有者」がその権利を主張することはすでに想定済みであるはずだと指摘した。

さらに宋博士研究員は、今回の南シナ海判決は照魔鏡(妖怪や悪魔の正体を照らし出してあばく伝説の鏡)のようなもので、「U形線(中華民国政府が主張する南シナ海における主権の範囲、別名11段線)」や「歴史的権利」などを理由に南シナ海の大部分の水域についての権利を主張することは、国際法の規定に合致しないと多くの国々が考える現在、台湾は「自分の地位とは何なのか」「これまでの主張は現実に即していただろうか」と自問すべきだと述べた。

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