2024/09/21

Taiwan Today

外交

インドネシアで活躍する台湾の警察官、米ドキュメンタリー番組が紹介

2018/04/09
内政部警政署刑事警察局からインドネシアに派遣された連絡官の李堅志さん(写真)はこれまで、インドネシアの警察当局と協力し、台湾出身者が関与する大規模な詐欺グループを摘発してきた。その成果は、米テレビ局が製作するドキュメンタリー番組『迷宮事件ファイル(Crime & Investigation)』に取り上げられたほど。(中央社)
現在、中華民国(台湾)が外交関係を結ぶ国は多くない。このため台湾の警察官は往々にして、正式な外交関係を持たない国々において、台湾の犯罪者が関与する「電信詐欺」(電話やメールを使った振り込め詐欺)を取り締まる必要に迫られている。例えばインドネシアもそのうちの一つで、中華民国(台湾)とインドネシアの間には警察・刑事司法協力に関する協定がない。そんな中、内政部警政署刑事警察局(日本の法務省刑事局に相当)がインドネシアに派遣する連絡官、李堅志さんは、台湾の犯罪者が関わる越境犯罪の取り締まりで多くの成果を上げている。李堅志さんはこれまで、インドネシアの警察当局と協力し、大規模な犯罪グループを摘発してきた。その成果は、米テレビ局が製作するドキュメンタリー番組『迷宮事件ファイル(Crime & Investigation)』に取り上げられたほどだ。
 
2015年から2017年末までに、台湾とインドネシアの警察当局の協力により摘発された「電信詐欺」の越境犯罪は10件に上る。その中でも注目されたのは、2015年8月末に摘発した事件だった。台湾とインドネシアの警察当局はジャカルタで、詐欺グループの大型拠点2か所を同時に摘発したのだ。警察当局は96名を逮捕。そのうち86名が台湾出身者だった。差し押さえた現金は約100億インドネシア・ルピアに達した。
 
当時、インドネシアの警察官は完全武装し、コンピュータなどが設置されている詐欺グループの拠点に踏み込んだ。台湾出身の犯罪者らがそうとも知らず、防音シートに囲まれた作業デスクで詐欺電話を掛けている最中だった。この様子は当日夜、インドネシアでトップニュースとして伝えられた。
 
この日、台湾とインドネシアの警察官らは、高速道路を逆走し、ジャカルタの南から北へと急ぎ移動した。普段なら1時間余りかかる道を、わずか20分で走った。最初の拠点に踏み込み、犯罪現場を取り押さえると、次の瞬間にはインドネシア警察当局の先導により、高速道路を再度逆走し、ジャカルタの北にある犯罪グループのもう一つの拠点へと向かったのだ。
 
李堅志さんは、デジタル証拠の消失は時間との戦いだと指摘する。詐欺グループの共犯者がデジタル証拠を別の拠点に隠したり、分散して隠したりしている場合、警察当局が踏み込んだ拠点に残るのはコンピュータ・ルームや遠隔操作端子のみで、クラウドに保存している被害者のデータや連絡記録などは、警察当局が踏み込んだと分かった途端、犯罪者がすべて削除しているケースが多いからだ。
 
「詐欺グループの拠点Aが摘発された場合、引き続き拠点Bを探すにはどうしたらいいか。警察当局にも、拠点Cや拠点D、それに把握していないその他の拠点があるかどうか予測できない。こうした拠点は、詐欺グループによってすでに閉鎖されたり、遠隔操作によって証拠が隠滅されたりしている可能性が高い」、「だから、これまでの経験と技術から判断すれば、直ちに次の犯罪拠点に向かうべきなのだ」と李堅志さんは話す。
 
詐欺グループは、データを消去することさえできれば、警察当局も犯罪者と証拠を一度に差し押さえるのは難しいことを十分理解している。一つの部屋に大人数が集まっているだけでは、犯罪とは断定できないからだ。こうして、警察と犯罪者のいたちごっこが繰り返される。越境型の「電信詐欺」の摘発が、時間との戦いというのはこのためだ。
 
こうした台湾とインドネシアの警察当局の協力による越境犯罪の摘発例は、米テレビ局が製作するドキュメンタリー番組『迷宮事件ファイル(Crime & Investigation)』が取り上げ、アジア各国で放送された。再現ドラマでは、インドネシアの人気俳優、Samuel Rizalさんが警察官の一人を演じたほか、俳優のLuis Jocoさんが台湾から派遣された李堅志さんをモデルにした人物を演じた。犯罪現場に踏み込むシーンはリアリティを出すため、インドネシア警察当局が特殊警察官を動員して撮影に協力した。この番組により、台湾の警察官の越境犯罪取締能力の高さが国際的にも注目された。
 
越境犯罪に関する台湾の取り締まりは成果を上げているものの、「電信詐欺」は複数の国々を巻き込んだケースが多いため、その取締りには依然として困難が存在する。李堅志さんはその問題が「海外での証拠採取」、「証拠の取得」、「犯罪者の送還」の3点にあると話す。
 
例えば「証拠の取得」について言えば、台湾とインドネシアは現在のところ警察・刑事司法分野で相互協力する法的な根拠を持たない。双方の警察当局の協力は緊密で、正式文書の往来もある。インドネシア当局は、台湾の警察官がインドネシアの犯罪現場を訪れ、証拠採取に協力することを歓迎している。しかしながら、長期的に考えると、双方は警察・刑事司法分野での相互協力を盛り込んだ協定書に署名するべきだと李堅志さんは考える。
 
当時、ジャカルタ警察局の局長を務めていたティト・カルナビアン(Tito Karnavian)国家警察長官も、インドネシアと台湾の警察当局は協力に積極的で、台湾出身者が関わる詐欺グループのジャカルタでの動きを台湾側に提供していると話している。
 
また、「海外での証拠採取」について李堅志さんは、台湾の警察当局は「電信詐欺」の取り締りについて豊富な経験を持つため、犯罪者は台湾に居続けるのが難しくなり、海外に出るようになっていると指摘。台湾の警察当局はその豊富な経験を武器に、もし経費が許すならば、積極的に海外へ出て行き、例えばインドネシアのデジタルテクノロジー犯罪の防止能力に協力すべきではないかと指摘している。
 

ランキング

新着