2024/05/04

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経済

国家衛生研究院が肺がんの新薬開発、5年以内に実用化へ

2018/03/27
財団法人国家衛生研究院は、肺がん治療のための分子標的薬「DBPR112」を開発した。この新薬は、特殊な遺伝子変異を原因とする肺がん治療に効果があると期待されている。5年以内の実用化を目指す。写真は新薬開発の過程を示すフローチャート。(科技部提供)
財団法人国家衛生研究院は、肺がん治療のための分子標的薬「DBPR112」を開発した。この新薬は、従来の分子標的薬では治療が難しかった特殊な遺伝子変異を原因とする肺がん治療に効果があると期待されている。5年以内を目途に実用化を目指す。
 
肺がんは、多くの先進諸国において健康を脅かす問題の一つとされている。肺がん患者のうち85%は非小細胞肺がんに属する。非小細胞肺がんの患者のファーストライン治療薬として用いられるのが、EGFR(上皮成長因子受容体)をターゲットとする分子標的薬イレッサとタルセバである。これらはそれぞれ2003年と2004年に発売された、第一世代と呼ばれる分子標的薬である。しかし、非小細胞肺がんの患者が第一世代の分子標的薬を使用すると、いずれ耐性化し、効果が見られなくなることが分かった。2013年に発売された第二世代のアファチニブは、第一世代の分子標的薬より耐性化までの時間がやや長いのが特徴だった。それに続くオシメルチニブは、第三世代と呼ばれるもので、第一世代と第二世代の分子標的薬で耐性が生じた患者の治療に用いられている。
 
一方、EGFR(上皮成長因子受容体)変異による肺がん患者のうち、エクソン20の挿入変異は約4%を占める。また、肺がん患者のうち約2~4%はHER2遺伝子変異である。現在開発されている分子標的薬は第三世代のオシメルチニブも含め、こうした患者には無効であることが分かっている。
 
国家衛生研究院は、EGFR(上皮成長因子受容体)変異の肺がんをターゲットとした分子標的薬の開発を進めており、新薬「DBPR112」の開発に成功した。
 
新薬「DBPR112」はEGFR(上皮成長因子受容体)の野生型(wild type)及びさまざまな遺伝子突然変異に対して一定の抑制効果を発揮する。すでに発売されている同類の分子標的薬アファチニブと比べると経口吸収率が高い。ラットを使った実験では、抗がん効果はアファチニブと同じ程度だったが、最大耐用量が比較的多く、毒性や副作用も比較的低いことが分かった。また、特定のEGFR(上皮成長因子受容体)変異及びHER2遺伝子変異(エクソン20の挿入変異)などの肺がん細胞には、極めて高い抑制効果が得られることが分かっている。
 
新薬「DBPR112」は2016年、衛生福利部(日本の厚生労働省に類似)食品薬物管理署(FDA)とアメリカ食品医薬品局(FDA)での「臨床試験用の新医薬品(Investigational New Drug)」申請が通り、国立台湾大学医学院附設医院と私立台北医学大学附設医院と協力し、2017年より第1相試験(フェーズ1)の臨床試験を行ってきた。
 
各種臨床試験の結果、新薬「DBPR112」の有効性と、アファチニブより安全性が高いことが証明されており、実際の使用でも人体への安全性と効果が期待されている。今後は非小細胞肺がん、頭頸部がん、乳がん、食道がん、及び有効な治療薬がない特定の遺伝子変異の肺がんなどに使用される予定。新薬「DBPR112」はすでに世界各国で特許出願を行っており、台湾、米国、中国大陸、日本、韓国などで特許権を取得している。


動物実験における新薬「DBPR112」の抗腫瘍活性を示すグラフ。左上から時計回りに頭頸部がん、乳がん、食道がん、肺腺がんの動物モデル。(科技部)
 

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