2024/05/03

Taiwan Today

経済

台湾、世界初の乳量も耐熱性も高いST牛を開発

2019/12/18
屏東科技大学動物科学・畜産学科の沈朋志教授が指導する博士課程の学生グループは、新たな生殖技術「紡錘体置換法」を利用して、耐熱性があって乳量が多い特性を持つST牛を誕生させた。(屏東科技大学提供、中央社)
オランダ原産のホルスタイン(Holstein)は、乳量が世界で最も多いといわれている。温帯地域に属するホルスタインを台湾で飼育した場合、台湾の気候が暑すぎるため、その乳量は温帯地域で飼育した際の半分に減少してしまう。そこで、屏東科技大学(台湾南部・屏東県)動物科学・畜産学科の沈朋志(Shen Perng- Chih)教授が指導する博士課程の学生グループは、新たな生殖技術「紡錘体置換法(Spindle Transfer, ST)」を利用して、黄牛(台湾の在来牛)とホルスタインの細胞を置き換えた4頭のST牛を誕生させた。1頭目は既に4歳になっている。
 
沈朋志教授は今回行った紡錘体置換法について、「まずは暑さに弱いホルスタインの卵母細胞の核小体を暑さに強い台湾の黄牛の卵母細胞に置き換える。さらにこの置き換えた卵細胞から分化した卵子とホルスタインの精子を人工授精させた後、メスのホルスタインの子宮に着床させる。この実験は2015年に開始し、2016年に初めてのST牛が1頭誕生した。2017年には2頭が生まれ、1頭が生存している。今年は2頭が生まれた」と説明した。
 
生存しているST牛は台湾で初めての成功例というだけでなく、世界初でもある。今後は、ST牛のオス牛とメス牛を交配させ、繁殖が続けられる計画だ。妊娠が成功すれば、牛乳を生産することができる。
 
沈朋志教授によると、台湾で飼育されるようになって既に400年近い黄牛は、優れた耐熱性を持ち、主に役牛として利用されてきた。ホルスタインは、温帯地域に属する牛のため、暑さに弱いが、乳量は世界最多ともいわれている。ST牛の外形はオランダ牛に似ているが、細胞質はすべて台湾の黄牛に由来しているため、この細胞質によって、耐熱性を持った牛への改良が可能となった。
 
かつての交配方法は環境に適応できる家畜品種をスクリーニングしなければならず、少なくとも15年の歳月が必要だった。紡錘体置換法を利用すれば、さらに速く、効率の良い抵抗力を持った家畜品種を生み出すことが可能で、亜熱帯気候の台湾で飼育するのに適した耐熱性のある乳牛の誕生が実現した。
 
なお、2頭のST牛は、大型動物を実験対象とし、次の世代の出産に成功した初めての例。

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