2024/04/29

Taiwan Today

経済

家禽から抽出した脂肪油、ハラル市場への進出も

2020/07/09
行政院農業委員会(=日本の農林水産省に相当)畜産試験所は8日、「家禽脂肪大変身・打造24億産値循環産業」と題する記者会見を開催し、家禽から抽出した脂肪油の研究・開発の成果を発表した。テーブルには「鶏油」や「鴨油」のほか、これらを応用した食品や美容品などが並べられた。(中央社)

行政院農業委員会(=日本の農林水産省に相当)畜産試験所は8日、「家禽脂肪大変身・打造24億産値循環産業(=家畜から抽出した脂肪が大変身・24億台湾元の市場規模を持つ循環産業を作り出す)」と銘打った記者会見を開催し、「鶏油」や「鴨油」など家禽から抽出した脂肪油の研究・開発の成果を発表した。

 

研究・開発に関わった畜産試験所の李孟儒研究員によると、日本のスーパーでも「鴨油(かもあぶら)」を取り扱っているが、いずれも白く凝固した状態で販売されている。このため台湾で鳥インフルエンザが発生するまで、鴨肉を日本に輸出していた台湾の業者には、日本の顧客からしばしばもう少し質の良い「鴨油」を日本に輸出できないかと問い合わせがあった。畜産試験所はこうした市場のニーズをくみ取り、家禽から抽出した液体脂肪油の研究・開発に取り組むことにした。

 

研究・開発の大部分の時間は、油脂を液体部分と固体部分に分離することに割かれた。業者側は添加物を一切使用しないよう希望していたため、物理的な方法で分離することに研究の重点が置かれた。その後、ある温度で油脂を液体と固体に分離することに成功。海外の同じような商品がいずれも白く凝固した状態で販売されているのに対し、台湾では初めて液体状態の「鶏油」や「鴨油」が市場に出回ることになった。この技術はすでに民間の業者に授与されており、生産した「鴨油」は日本にも輸出されているほか、台湾でも購入することができる。

 

液体の状態を保ったままの「鶏油」や「鴨油」の不飽和脂肪酸は65%以上に達する。数年前のWHO(世界保健機関)の発表でも、これらは動物性油脂の中でも比較的健康なものだと指摘されたことがある。発煙点は摂氏210度で、さまざまな料理に使用することができる。オリーブオイルと同じように使用することもできる。一方、分離されたほうの固体脂肪についても食品の調理、ペースト、ベーカリーなどに応用することができる。

 

技術を授与された民間業者が生産する液体状態の「鴨油」は2017年、ベルギーの国際味覚審査機構(iTQi)から優秀味覚賞(Superior Taste Award)の2つ星を授与された。技術を授与された別の業者は、この「鴨油」を利用して鴨もも肉のコンフィのレトルトパックを開発し、世界四大美食賞の一つである「 A.A. TASTE AWARDS 2020」で最高評価の3つ星を受賞している。

 

畜産試験所はこのほか、「鶏油」を抽出する過程で出る「油かす(中国語では「鶏油角」)」の生産技術で特許を取得した。ラードを取りだしたあとに出る「豚油角」と呼ばれる「油かす」を使うソーセージを、鶏肉と「鶏油角」で代用する研究が進められている。この商品は、2025年に2600億米ドルの規模に成長すると言われるハラル市場への進出が可能なことから、東南アジア市場での商機開拓を目指すことができる。但し、現在はまだ研究・開発の段階にあり、商品化後はまずハラル認証の取得を目指すとしている。

 

台湾では毎年、3億羽のニワトリ、3,500万羽のカモが食肉加工されている。食肉加工の過程でニワトリ1羽からは平均20~40グラム、カモ1羽からは10~30グラムの余剰脂肪が出る。全体では年間1,000万キログラムに達するが、これらは主に飼料に加工されたり、廃棄されたりしていた。廃棄物として処理する費用も高く、かつて家禽脂肪はその価値を十分に発揮することができず、業者にとって負担となっていた。このため畜産試験所は5年の歳月をかけて「家禽脂肪の抽出と純化技術」を確立。液体の状態を保つことのできる家禽の脂肪油はさまざまな料理に応用できるため、家禽脂肪の商業価値を大幅に高めることに成功した。

 

「鶏油」や「鴨油」などは海外に輸出すると1キログラム当たり300~1600台湾元(約1,092~5,820台湾元)で販売できることから、市場規模は年間24億台湾元(約87億日本円)に達する。家畜脂肪を「鶏油」や「鴨油」に加工することで、業者は廃棄物処理費用を節約することができるようになった。また、家禽産業を循環産業にレベルアップすることもできるようになった。

 

現在、家禽脂肪を利用して開発した商品には「鶏油」や「鴨油」のほか、鴨もも肉のコンフィ、液体ソープ、リップクリーム、鴨ペーストなどがある。

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