2024/04/27

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経済

リオ五輪で注目、カッピング療法とは

2016/08/12
水泳の米国代表、マイケル・フェルプス選手の肩にくっきり残る赤紫色の丸いアザは、東洋医学で行われるカッピング(吸い玉)療法の痕跡。体内の「邪気」を吸い出し、疲労回復にも役立つとされている。(中央社)

ブラジルのリオデジャネイロで開催されている夏季オリンピックで、選手の活躍とは別に注目されているのが東洋医学で行われるカッピング(吸い玉)療法だ。漢方医によると、カッピングは体内の「邪気」を出すことができるが、東洋医学で言うところの「虚寒タイプ」とされる体質の人や、皮膚に傷がある人は、意識を失ったり蜂窩織炎(ほうかしきえん)を引き起こしたりする可能性があるため、カッピング療法は避けるべきだという。

報道によると、リオ五輪の水泳競技では、肩や背中にカッピング療法を受けたあとにできる赤紫色の丸いアザが残る外国の選手が多数見られた。米国代表のマイケル・フェルプス選手もその中の一人だ。

台湾北部・台北市大安区にある東洋医学の診療所、爾雅中医診所の李昀真医師によると、漢方医学でよく行うカッピング療法は、患者の肩や首、膝などの筋肉痛、あるいはスポーツに起因する怪我(捻挫、肉離れ)、熱中症、頭痛、胸のつかえ、胃腸系の消化不良などの改善に有効で、「気血(人体内の生気と血液循環)」の流れを良くし、「経絡(けいらく、「気血」の通り道)」をほぐし、「風湿(「風邪」と「湿邪」)」を取り除く効果があるという。

台湾中南部・雲林県にある中国医薬大学北港附設医院中医部の何宗融主任は、カッピング療法は針や灸、刮痧(かっさ)、それに漢方薬を服用するのと同じく、一種の治療手段であり、体の表面から侵入しようとする「病邪」を、カッピング療法で防ぐことができるのだと説明する。

何主任によると、カッピングは筋肉の一番厚みのある場所で行う必要があるため、一般的には肩や背中、太ももなど、うっ血したり、傷が付いたりしにくい場所が選ばれる。カッピング療法では、皮膚の深層にある毛細血管を破壊するため、患部を清潔にしておく必要がある。汗を拭きとるだけでなく、あらかじめアルコール消毒をしておくと良い。

李昀真医師によると、カッピング療法による副作用で最も多いのが「めまい」。虚弱体質の人、あるいはカッピング療法を受ける前の空腹時間が長かった人が、あまりに体の広い範囲でカッピングを行った場合、身体がその負荷に耐えられず、めまいを引き起こす可能性がある。もしこのような状況に陥った場合は、直ちに休息をとり、肩を上に引っ張り上げるように揉んだり、「人中(じんちゅう、鼻と口との間にある縦の溝)」をつまんだり、水を飲んだり、何かを食べたりすると改善する。

めまいのほか、体内の「湿気」が多い人は、カッピング療法を受けた場所に水泡ができることがある。水泡ができるのを避けるためには、カッピング療法を10分以内に抑える必要がある。

虚弱体質だけでなく、カッピング療法を受けるのに適さないいくつかのタイプの人がいる。肌にアレルギーが出やすい人や、じんましんや皮膚疾患がある人は、患部でカッピング療法をしないほうがいい。妊婦や6歳以下の児童にも勧めない。また、糖尿病、高血圧、心臓病などの慢性疾患があり、病状をうまくコントロールできていない人はリスクがやや高くなる。

東洋医学では漢方医が「望聞問切(「望診」、「聞診」、「問診」、「切診」の四つを略した言葉。「望診」は目で見て観察すること。「聞診」は耳で聞いたり鼻で嗅ぐこと。「問診」は患者に言葉で尋ねること。「切診」は触れて調べること)」を行い、脈を取って弁証(診断)してから、症状に応じた薬を処方する。このため患者にとっては実感も深い。何主任によると、ある中年の男性患者は、頭痛持ちで2年前から首を回すことができずにいた。台湾各地の医者に診てもらったが、いくら調べても骨や筋肉には異常がなく、一向に改善せずにいた。しかし、何主任の診断により、カッピング療法と刮痧(かっさ)療法を行ったところ、10分間で痛みが緩和されたという。

カッピング療法は生体を傷つけることがない非侵襲的な行為だが、その過程においては力のコントロールが必要とされる。このため、自身の判断でカッピング療法を受けることは避け、必ず資格を持った漢方医に診てもらい、弁証を経てから治療を受けるべきである。

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