2024/05/03

Taiwan Today

文化・社会

小説『単車失竊記』が台湾の作品としてブッカー国際賞に初ノミネート

2018/03/13
国際的な文学賞、ブッカー国際賞の第一次ノミネート作品が12日に発表され、台湾の小説家、呉明益さん(写真右)の『単車失竊記(The Stolen Bicycle)』(写真左)が選ばれた。台湾の作家で同賞ノミネートは初めて。(左は中央社、右は文化部サイトより)
国際的な文学賞、ブッカー国際賞(Man Booker International Prize)の第一次ノミネート作品が12日に発表され、台湾の小説家、呉明益さんの『単車失竊記(The Stolen Bicycle)』が選ばれた。台湾の作家で同賞にノミネートされたのは呉明益さんが初めて。『単車失竊記』は2015年に「台湾文学金典奨(賞)」の図書類長編小説金典奨(賞)を獲得。台湾東部・花蓮県にある国立東華大学で教鞭をとる呉明益さんは第3回聯合報文学大奨(賞)の受賞者でもある。聯合報は台湾の大手日刊紙。
 
ブッカー国際賞は、世界的に権威のある文学賞であるマン・ブッカー賞(Man Booker Prize)が2006年に、イギリス連邦の小説以外で、英語で書かれた作品もしくは英語に翻訳された作品のために設けた賞。2016年からは毎年、イギリスで出版された翻訳作品に与えられている。翻訳の重要性を際立たせるため、賞金の5万ポンド(日本円約750万円)は原著者と翻訳者が共同で受け取ることになっている。
 
『単車失竊記』は人々のよく知る自転車を軸としており、失踪した父親とかつての自転車を探す中、島の風景を通じて現実と追憶の様々な物語が交錯しながら語られる。登場人物は台湾の様々なエスニックグループの戦争体験や歴史が残した傷跡とかかわる。同作品はすでに英語、日本語、韓国語版の版権が売れており、英語版はDarryl Steak氏が翻訳した。呉明哲さんの長編小説『複眼人』の英語訳もSteak氏が担当した。
 
ブッカー国際賞は4月12日に第二次ノミネート作品が発表され、5月22日に今年度の受賞作品が明らかになる。
 
呉明益さんは12日夜、自身のフェイスブックに投稿、第一次ノミネート作品リストの作者たちの名前を列挙した上で、「これらの作家と並んでリストに入っていることをとても光栄に思う。さらに自分の名前の後ろの国籍欄にはTaiwanと書かれている」と記した。呉さんはまた、翻訳者のSteak氏に感謝、さらには読者たちに対し、「読者に感謝する。これからも物語を届ける」と書き込んだ。
 
ノミネート作品の原著者で呉さんがフェイスブックで挙げたのは、フランスのローラン・ビネ(Laurent Bient)、スペインのハビエル・セルカス(Javier Cercas、国際IMPACダブリン文学賞を受賞)とアントニオ・ムニョス・モリーナ(Antonio Munoz Molina、スペイン国家文学賞を2度受賞)、ドイツのJenny Erpenbeck、Strega European Prizeを受賞)、韓国の韓江(ブッカー国際賞を受賞)、ハンガリーのクラスナホルカイ・ラースロー(Laszlo Krasznahorkai、映画『ニーチェの馬』の脚本),そして呉さんが作家を目指すようになる啓発を与えてくれた1人だというポーランドのOlga Tokarczuk。
 
2016年に呉さんが「聯合報文学大奨」を受賞した時の審査員の1人、文芸評論家で学者の王徳威氏は授賞理由に関連して、呉明益さんのかつての作品は郷土文学のスタイルが残っていたが、真のブレイクスルーは自然な文章から始まったと指摘。王徳威氏は、呉さんの『迷蝶誌』、『蝶道』、『家離水辺那麼近』、『浮光』などのエッセイ集は現代の環境意識に呼応したものであるばかりでなく、強烈な知性と実証の精神を示して読者の目を見張らせたと説明した。呉さんはこうした特色を小説作品に持ち込み、幻想的な色彩を混ぜ合わせることで独特のスタイルを生み出したのであり、『睡眠的航線』、『複眼人』、『天橋上的魔術師(日本版タイトル:歩道橋の魔術師)』などの作品はその良い例だという。
 
『天橋上的魔術師』は全10話のテレビドラマ化が決まっている。公共テレビ(公視、PTS)は製作費1億5,000万台湾元(約5億4,000万日本円)を投じる予定。文化部(日本の省レベル)の鄭麗君部長(大臣)は12日夜、呉さんの第一次ノミネートを知るとすぐさま自身のフェイスブックに、「『単車失竊記』がブッカー国際賞にノミネートされたことは台湾文学の名誉だ」と書き込んだ。
 
 

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