2024/04/28

Taiwan Today

文化・社会

台湾人医師が公開した「エアロゾル・ボックス」設計図、世界20か国で採用

2020/04/06
台湾東部・花蓮県の台湾基督教門諾会医院(=病院)の頼賢勇医師は、新型コロナウイルスの感染者に気管挿管する際、医師がウイルス感染してしまうリスクを回避するため、「エアロゾル・ボックス」と名付けたアクリル製ボックスを製作した。現在世界20カ国で採用されている。写真左は頼賢勇医師、右はインドネシアで改良された「エアロゾル・ボックス」。上部に頼賢勇医師の設計によるものであることが書かれている。(左は台湾基督教門諾会医院のブログ、右は中央社)
台湾東部・花蓮県の台湾基督教門諾会医院(=病院)の頼賢勇医師は、新型コロナウイルスの感染者に気管挿管する際、医師がウイルス感染してしまうリスクを回避するため、「エアロゾル・ボックス」と名付けたアクリル製ボックスを製作した。患者の頭部をボックスで覆い、気管挿管などの治療を行うことで、医師を飛沫感染のリスクから守ることができる。
 
頼賢勇医師がこのボックスを発明したという報道記事はSNSで瞬く間にシェアされ、現在でもフェイスブック(FB)で「Aerosol box(エアロゾル・ボックス)」と入力して検索すると、この記事をシェアした多くの文章を目にすることができる。現在台湾だけでなく、中国、フィリピン、インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム、カンボジア、香港、米ニューヨーク、アトランタ、フェニックス、ボストン、欧州ではポーランド、スウェーデン、イタリアなどの20カ国の都市で「エアロゾル・ボックス」が活躍している。
 
頼賢勇医師は取材に対し、「エアロゾル・ボックス」はただのコンセプトに過ぎず、設計図公開後、こんなに早くインターネットで拡散されるとは思っていなかったと話す。また、「これは実は不幸なことだ。もし、感染症予防の必要がなければ、このようなボックスは存在しないのだから。このボックスが使われないことを願っている」と語る。
 
今年1月、新型コロナウイルスの感染拡大が始まったとき、かつて知り合った中国の医師たちから、医療の最前線で働く医療関係者に必要な物資が足りないと聞かされた。何とかして協力したいと考えた頼賢勇医師は2月上旬、花蓮県内のアクリル工場の協力を得て、「エアロゾル・ボックス」の試作品を作った。これをフェイスブックでシェアしたところ、1か月後、このことを間接的に知ったというアメリカの医療関係者から「エアロゾル・ボックス」の情報を提供して欲しいと連絡が来た。アメリカの医療設備は十分だと考えていた頼賢勇医師は、意外な申し出に驚いた。
 
そこで頼賢勇医師は3月22日、著作物の流通促進を目的とした非営利団体「クリエイティブ・コモンズ」のサイトに登録し、「エアロゾル・ボックス」の設計図を誰もが無料でダウンロードできるようにした。特許出願を建言する人もいたが、特許出願の過程は非常に長く、完成品を作ってしまうと、ほかの人が作れなくなってしまう上、台湾から海外に発送するにしても時間がかかりすぎてしまうと考えた。
 
頼賢勇医師によると、この「エアロゾル・ボックス」は新生児を入れる保育器からインスピレーションを得たものだという。ハイテクを駆使したわけでも、特殊な技術が必要なわけでもない。ただ、応急措置として作ったものだ。「患者を救うとか、治療するためのものではなく、医療関係者を感染のリスクから守るために編み出したものだ。医療関係者が命を落とすことがあったら、感染症の制御はさらに難しくなるからだ」と話す。
 
実際、米ボストンのメディカルスクールが作成した動画によると、この「エアロゾル・ボックス」のおかげで医療関係者の飛沫感染リスクが95%以上削減されたという。
 
また、頼賢勇医師の設計図をもとに改良を重ねたケースもある。例えばフィリピンには最新の人工呼吸器がないため、麻酔科医が患者に顔を近づけて対処する必要がある。このため、頼賢勇医師の「エアロゾル・ボックス」では、麻酔科医の頭がボックスに当たってしまうという問題があった。こうしてフィリピンでは、「台形」への改良がなされた。
 
頼賢勇医師によると、現在大勢の人が参加して「エアロゾル・ボックス」のサイトを立ち上げ、全世界の人々が自由に閲覧したり、新しいアイデアを披露したりできるようにしている。当初は中国語と英語でコンテンツを掲載していたが、その後、大勢の人の手によって各種の言語に翻訳されるようになった。ニューヨークでは現在、このボックスが新型コロナウイルス感染者の頭部を覆うのに使われ、その機能を発揮している。頼賢勇医師はすでに新バージョンのボックスを設計している。新バージョンは1度きりの使い捨てタイプだという。
 

ランキング

新着